腎臓とは
・「肝腎要(かなめ)」の言葉の通り重要な臓器です。
・生命と健康を維持するために、1日24時間、年中無休で働いています。
・身体の腰よりやや高い位置の背中側に左右ひとつずつあります。
・そらまめのような形をしています。
・10cm(握りこぶし)ほどの大きさです。
・重さは120~150g程度です。
腎臓の働き
・体内の血液をろ過して、老廃物や余分な水分を体外へ排出する。
・血液中の水分と、ミネラルバランスを保つ。
・血圧を調整するホルモン(レニン、プロスタグランジンなど)をつくる。
・赤血球の産生に必要なホルモン(エリスロポエチン)をつくる。
・骨を健康に保つのに必要なビタミン(ビタミンD)を活性化させる。
腎臓の働きが悪くなると
・尿毒症症状が出る。
(だるさ、むくみ、息切れ、食欲不振、吐き気など)
・高血圧が続き、心筋梗塞や心不全、脳卒中などの血管系合併症のリスクが高くなる。
・貧血になりやすくなる。
・骨が弱くなる。
腎臓病について
腎臓病といってもたくさんの種類があるため、原因や症状が異なり、病状もさまざまです。
腎臓は“沈黙の臓器”ともいわれ、症状が出たころには病気がかなり進んでいる場合も少なくありません。
そして、腎臓はある程度悪くなると自然に治ることはありませんので、放っておくとどんどん進行してしまいます。
早い段階できちんと病気を見つけ、病気にあった治療をしっかりとしていくことが大切です。
慢性腎臓病(CKD)について
慢性腎臓病(CKD)とは、さまざまな種類がある腎臓病の総称です。自覚症状がないまま腎機能が低下した状態や、腎臓に障害がある場合に出るたんぱく尿が3ヶ月以上続くことをいいます。
治療をせずに放置しておくと、やがて末期腎不全となり透析や移植を受けなければ生きられなくなる可能性が高まります。
現在、日本には約1,330万人(成人の8人に1人)のCKD患者さんがいると考えられ、“新たな国民病”といわれています。
※CKDになると、心筋梗塞や心不全、脳梗塞などの血管系合併症のリスクが高くなります。
CKD患者さんでは、末期腎不全に至る前に血管系合併症を起こして亡くなる場合も多いといわれています。
つまり、腎臓を守ることは心臓や脳を守ることにつながります。
<CKDの定義>
① 腎障害・・・たんぱく尿が出ている(0.15g/日以上)
② 腎機能の低下・・・糸球体ろ過量(GFR)が60ml/分/1.73㎡未満※1
※1 健康な人の腎機能を100%とした場合、60%以下になるという意味になります
※上記の項目の①②両方、または、どちらかが3ヶ月以上続くと診断されます。
<CKDの病期ステージ>
・GFR区分は、血清Crと年齢、性別から算出した腎臓の機能(eGFR:推定糸球体ろ過量)で行います。
・CKD重症度分類は原疾患・GFR区分、たんぱく尿区分にて判定します。
<CKDへ至る主な病気>
【代表的な腎臓病】
急性糸球体腎炎(急性腎炎)
風邪などの感染症にかかった後に、2~3週間程してから発症し、症状は血尿・たんぱく尿や高血圧、むくみなど。
治療は1~2ヶ月の入院および自宅での安静が基本です。
慢性糸球体腎炎(慢性腎炎)
風邪などの感染症にかかった後に、2~3週間程してから発症し、症状は血尿・たんぱく尿や高血圧、むくみなど。
治療は1~2ヶ月の入院および自宅での安静が基本です。
IgA腎症
大量のたんぱく尿によりネフローゼ症候群を起こすことが多く、たんぱく尿の出現や回復を繰り返しながら、長い経過をたどることが多いです。
ネフローゼ症候群
大量のたんぱく尿(1日尿たんぱく3.5g以上)が持続し血液中のたんぱくが減少し(低たんぱく血症)むくみを生じ、コレステロールの増加などを認める状態です。
単一の病気を表す言葉ではありません。
【他の病気が原因で起こる腎臓病】
糖尿病性腎症
糖尿病の合併症の一つ。現在、新たに透析を始める患者様の原因として一番多く、40%以上がこの病気をもっています。
治療には、血糖・血圧コントロールが大切です。
高血圧性腎硬化症
高血圧によって腎臓の血管が障害され、腎臓が硬く小さくなり腎機能が低下したもの。
多くは自覚症状もなく進行しますが、頭痛や吐き気、意識障害などがあれば早急な治療が必要です。
痛風腎
「痛風」は血液中の尿酸が過剰な状態になると、足の親指の付け根や関節などに結晶化して溜まり、激痛を起こす病気。
尿酸は腎臓にも沈着して、腎臓の機能を障害します。
【遺伝性腎臓病】
多発性のうほう腎
腎臓の中で袋状ののう胞が多く発生し、腎臓を圧迫して肥大させ、腎臓に障害を与える遺伝性の病気です。
高血圧や貧血を伴い、症状がゆっくりと進行して腎不全になります。
検査について
検査の流れ
尿検査
・尿にたんぱく質や血液が漏れ出ていないかを調べます。
ただし、発熱や激しい運動などでもこれらが出ることもあるので、繰り返し検査する必要があります。
・安静が保たれる早朝に尿を採取してもらい持参する検査(早朝尿検査)を行います。
・1日の全ての尿を貯めて、その一部を持参していただく(24時間蓄尿検査)も必要に応じて行います。
尿の成分を調べることで、1日に食べた蛋白の量や塩分、カリウム、リンなどの量も知ることができます。
【血尿の場合】
血尿とは?
・血尿とは何らかの原因で、尿に赤血球が混じった状態です。
・目に見えてわかる“肉眼的血尿”と、目に見えず顕微鏡で見て初めてわかる“顕微鏡的血尿”があります。
血尿といわれたら?
・どのような時に血尿が出るのかを調べるために、早朝尿(安静時)や活動後など色々な状況で繰り返し尿検査をして経過をみます。
どのような病気の時に血尿が出るの?
・内科的な病気で代表的なものは、急性及び慢性の糸球体腎炎です。
・血尿だけの場合は、腎臓病のほかに泌尿器の病気(尿路結石、尿道の奇形、癌など)でも現れます。
【たんぱく尿の場合】
たんぱく尿とは?
・たんぱく尿は、たんぱくが尿に漏れ出てくる状態です。
・体を動かした後に出る起立性または運動性たんぱく尿と、病気が原因となる病的なたんぱく尿があります。
どうしてたんぱく尿が出てくるの?
・たんぱくは体にとって大切な構成成分ですから、健康な人の尿には、ほとんど出てきません。
しかし、腎臓に病気が起きると、ろ過機能がうまく働かず尿に漏れ出てくるようになります。
どのような病気の時にたんぱく尿が出るの?
・一番代表的なものは、慢性糸球体腎炎です。
・高血圧や糖尿病などの生活習慣病も腎臓を傷め、たんぱく尿が出ます。
【血尿とたんぱく尿の両方がある場合】
・病気の確定診断のため腎生検をし、適切な治療を受けることが大切です。
血液検査
・採血で得られる様々な項目から腎臓の状態をチェックします
画像検査
・超音波検査(エコー)や腹部CTなどで、腎臓の形、大きさや合併症(腫瘍や結石など)の有無を調べます。
腎生検
・腎臓の組織を一部とり、顕微鏡で評価を行なうこの検査は、たんぱく尿、腎炎、腎硬化症、腎不全などの腎臓疾患を診断し、今後腎臓病がどのように進行していくかの予測もできます。
患者様にとって最適な治療法を決定する上で欠かせません。
どのような時に腎生検が必要となるのでしょうか?
1.血尿・たんぱく尿が持続し、慢性腎炎が疑われる時
2.1日に、0.5g以上のたんぱく尿がある時
3.急速進行性腎炎※1が疑われる時
4.原因不明の腎不全で、まだ腎臓が普通の大きさの場合
※1 血尿、たんぱく尿が存在し、数週から数ヶ月で腎臓が働かなくなる腎炎ですが、早期発見、早期治療で治る患者様もいます。
腎生検の目的
1.正確な組織診断を得ること
2.病状の見通しを予測すること
3.適切な治療法を決定すること
腎生検の方法
・背中から穿刺針を刺して、腎臓の組織を採取します。
・穿刺前は局所麻酔が行われ、超音波装置でみながら腎臓の位置や大きさが確認されます。
検査後の安静
・入院期間は7日間程度です。
・腎臓に針を刺した後は、圧迫して止血を行いますが、その後も安静が必要です。
・2~3週間は、腹圧を掛ける動作や、激しい運動は避けてください。
治療について
治療の目的は、病気の進行を遅らせ透析の必要な末期腎不全にならないことです。
そのためには、病気の進行具合に合わせた食事・運動・薬物療法を患者様自身に気をつけていただく必要があります。
①薬物療法
・血圧を調整する・・・・降圧剤・利尿剤(ディオバン・カルブロック・アムロジン・コリネールラシックス・フルイトラン・アルダクトンなど)
・老廃物を追い出す・・・経口吸着炭素製剤 (クレメジン)
・血液をつくる司令官・・・エリスロポエチン製剤 (ミルセラ・ネスプ)
・体液の調整をする・・・カリウム・リン吸着薬(カルタン・炭酸Ca・アーガメイトゼリー・ケイキサレート・重曹)
・強い骨をつくる・・・・骨・カルシウム代謝薬(ロカルトロール・アルファロール・アスパラCAなど)
②食事療法
・塩分の制限・・・(1日6g未満)
・たんぱく質の制限・・・(魚・肉・大豆製品など)
・エネルギーの確保
・カリウムの制限・・・(果物・生野菜など)
・リンの制限・・・(牛乳・チーズなど)
・適度な水分摂取
③日常生活
・過労を避ける
・ストレスをためない
・過度の運動は避ける
・禁煙する
・過度の飲酒は避ける
・適正体重を維持する
≪CKD自己管理のポイント≫
①腎機能の把握:腎臓の検査を定期的に受けましょう
②血圧管理:130/80mmHg未満
③食事管理:減塩・・・・1日6g未満 / たんぱく質・カリウムの制限
④体重管理:標準体重(kg)=[身長(m)]×[身長(m)]×22を保つ
⑤禁煙:CKD進行を抑えるためには、まず禁煙することが重要です。
⑥血糖管理:HbA1c 6.9%未満
腎不全期前期
慢性腎不全と診断される最初の段階です。
腎臓の機能は落ちてきていますが、体液などのバランスは保たれ自覚症状もほとんどありません。
この時期はまず病気の事を知り、腎臓を守るポイントを理解して頂き、日常生活の中で患者様自身が自己管理できることが大切です。
GFR45以上(CKDステ―ジG2~G3a)
《腎臓が老廃物を排泄する働きが45%以上》
保存期腎不全期
腎臓の働きはある程度悪くなっているが、透析治療などを必要とするまでではない状態です。
血液検査で尿素窒素やクレアチニンの値が上昇し貧血も認められます。
だるさなど腎不全による自覚症状も感じるようになります。
この時期は残っている腎臓の働きを大事に維持し、透析などへの移行を少しでも遅らせることが大切です。
そのため定期受診で“いま”の状況を確認しつつ、必要な治療や日常生活の注意点と腎機能を悪化させる原因などについても一緒に話していきます。
GFR30~44(CKDステ―ジG3b~G4)
《腎臓が老廃物を排泄する働きが半分以下》
透析前腎不全期
食事療法や薬物療法だけでは、尿毒症症状のコントロールが難しくなってきます。
そのため末期腎不全に対する何らかの治療手段(腎代替療法)が必要となる時期です。
GFR30未満(CKDステ―ジG5)
《腎臓が老廃物を排泄する働きが30%未満》
末期腎不全に対する治療
【血液透析】
腎臓の働きをしてくれる機械を使って、血液中に溜まった余分な水分や老廃物を取り除き電解質のバランスを整え、きれいになった血液を再び体内に戻すことをいいます。
透析治療をする為に、腕の血管にシャントを造設します。 1回の治療は4~5時間かけて行い、体全体の水分や老廃物正常に近い値にすることができます。
しかし、水分や老廃物はまた溜まってしまうため、週3回の通院が必要となります。
【腹膜透析】
お腹に約1500~2000mlの透析液を入れて、腹膜を通して血液中の余分な水分や老廃物を取り除き電解質のバランスを整える治療法です。
1日4~5回患者様自身で透析液の交換を行います。
腹膜透析をする為に腹部にカテーテルを植え込みます。
それぞれの生活スタイルに合わせ、交換時間を調節することができます。
月に1・2回の通院が必要です。
【腎臓移植】
提供者(ドナー)から腎臓の提供を受け、受腎者(レシピエント)に移植することで、腎不全の状態から回復する治療法です。
腎移植には親族であるドナーの方から腎臓を一つ提供していただく生体腎移植と、脳死あるいは心臓死ドナーの方から腎臓を提供していただく献腎移植があります。
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